その一瞬さえも、惜しくて。
鳴瀬ひかりが歩いて、その後ろを僕も追う。
向かっているのは
体育館の近くの隣の校舎で、
ここは滅多に生徒は通らない場所だった。
鳴瀬ひかりは僕に気付くこともなく
淡々と歩いていく。
こんな人を後ろから追うなんてこと
生まれて初めてだった。
凄くいけないことをしているんじゃ
ないかって考えていたけど、
でもどうして鳴瀬ひかりが放課後
あんなに急いで教室を出ていくのか
そして今日の授業中の微笑みの
視線の先を
どうしても知りたかったんだ。