その一瞬さえも、惜しくて。
その教室から軽く覗かせた顔を見て、
僕は息が詰まるんじゃないかと思った。
「ひかり、お疲れ様。
誰にもバレずに来たか?」
「もちろんっ、ねぇ先生
今日コケてたでしょー。私見てたよ。」
そんな二人は微笑ましく会話を交わしながら
教室へと入っていった。
やっぱり。
僕の見間違いではなかったんだ。
誰もいない廊下で
ただひっそり、“ 体育教官室 ”と
書かれた教室のドアを僕は見つめるしかなかったんだ。