その一瞬さえも、惜しくて。
「鳴瀬!」
そんな彼女を想像すると
居ても立ってもいられなくて、名前を呼んでいた。
慌てて振り返る彼女の元へ駆け寄る。
「なに?」
「今日一緒に勉強しない?」
「は?何言ってるの?」
優しく微笑みながら言ったつもりだったのに
彼女は何だか不機嫌そうで。
「いや、だから、
一緒にテスト勉強しませんか?って。」
もう一度丁寧に言ってみても。
「だから、そうじゃなくて…。」
廊下の真ん中で話す二人はどうやら目立っていたようで
周りの視線を鳴瀬ひかりは感じていた。
「ちょっと、こっちきて。」
鳴瀬ひかりは僕の腕を掴み
人気の無い階段裏へ連れて来た。