その一瞬さえも、惜しくて。
目を見開いて、鳴瀬ひかりはびっくりした様子だった。
「そのことっ…誰かに言っ、」
「言ってねーよ。鳴瀬が悲しむ顔は見たくないから。
誰にも言うわけないだろ。」
ほっとしたのか、彼女はため息をついて
ぎゅっと僕があげたノートを
握り締めていた。
「…いつから知ってたの?」
「んー、いつからだったっけ。
でも隣の席になって、
鳴瀬のこと気にしなかったら
…絶対に気付かなかったよ。」
「軽蔑した?
それともからかってる?楽しんでるんでしょ?」
「そんなことねぇよ。
まぁかっこいいもんな、仕方ねぇって思うよ。
でも、負けないって思ってるから、俺。」
それを聞いた鳴瀬ひかりは
呆れたようにため息をついた。