その一瞬さえも、惜しくて。
「ばっかじゃないの。絶対にからかってるでしょ。
あの人に誰も勝てっこないよ…。」
そう彼の事を思い出しながら
笑う彼女は、とても綺麗だった。
悔しいくらい綺麗だった。
「わたし、もう行くね。
この事誰かに言ったら許さないから。
それから、陽太先生にも。」
「わかってるよ。約束する。」
あっという間に五分は過ぎて行って
まだ一緒に居たいと思ったのは、秘密。
「勉強頑張れよ。」
彼女が早々に歩いていく後ろ姿を見付めて
切なさと嬉しさの複雑な気持ちを
抑えたんだ。