完璧上司は激甘主義!?
仕事の電話かな?

でも助かったかも。
どんな顔して戻ればいいのか分からなかったし。電話が終わった頃声を掛ければ、「仕事ですか?」って話題も出せることが出来る。

安堵し、電話の邪魔をしないようゆっくりと南課長へと近づいていく。
すると鮮明に見えてきた南課長の表情に違和感を覚える。

だって仕事の電話なら、きっと職場で見せるような厳しい表情のはずだ。
なのに今の南課長の表情は終始優しくて、口元も緩んでいるのだから。

嫌な予感がした。
女の勘、というものなのだろうか。

聞かなければ良かったのかもしれない。
電話の内容を――。

ずっと南課長の存在に気付かないフリをして、遠くから見つめていればよかったのかもしれない。
そうすればきっと私は、何も知らずに南課長への気持ちに素直に頑張れていたのに――。


「分かってる。……あぁ、ちゃんと帰るから待っててくれ。……ん?機嫌が悪い?なら大好きなケーキ買っていってやるから。……あぁ、また帰る時電話するから。……いい子で待っていろよ?ショーコ」


宥めるように囁かれた“ショーコ”という名前。
それだけで分かってしまった。
電話の相手は、南課長にとって大切な人なんだって――。
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