完璧上司は激甘主義!?
返事を返すだけで精一杯だった。

「じゃあ頑張れよ」


“ジャケットを落としてしまったごめんなさい”とか“その子猫、どうするつもりなんですか？”とか……。
言いたいことも聞きたいこともあったのに、言葉が出てきてくれなかった。
ただ、子猫を愛しそうに抱きながら去っていく彼の後ろ姿を、立ち尽くしたまま見送ることしか出来なかったんだ。

よく漫画や小説の世界で、運命の相手と出くわした瞬間、雷が落ちたようだ。なんて台詞を見たことがあるけれど、今の私はまさにその状態だった。

少しだけ口角を上げて微笑んだ彼の笑顔を見て、“やられた”って思った。
一目惚れなんて、世の中あるわけないと思っていたけど、本当はあるんだよ。
だって私……完全に彼に一目惚れというものを、してしまったのだから。


しばらくの間、立ち尽くしてしまっていた私は、エタンスラントの説明会にギリギリに間に合った形になってしまった。
これが入社試験だったら……と考えたら恐ろしくなってしまったけど。
説明会の時間はとても有意義で、より一層エタンスラントに就職したい気持ちが大きくなった。
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