完璧上司は激甘主義!?
ショーコさんの方が私の何倍も味わっているはず――。

いまだに笑っている南課長を見るたびに、ますます胸が苦しくなっていく。

ハッキリさせてスッキリしたい気持ちと、このまま自分の中の憶測で留めておきたい気持ちが交差する。
でも――……。
やっぱりちゃんと知りたい。
大切な人がいるって分かっても、好きって気持ちは消えそうにないのだから。

「南課長」

「ん?」

笑いを堪え私を見る眼差しは、優しくて勘違いしそうになる。
だけど違うんだ、きっと。
私が南課長に対する気持ちと、南課長が私に対する気持ちは違う。

真面目に聞くのは抵抗を感じ、冗談っぽく笑いながら聞いた。

「早く帰った方がいいんじゃないですか?……えっと、その……大切な人が待っているのかもしれませんし」

憶測でしかない言い方。
南課長はなんて返してくれる?
冗談には冗談返しで「そんな人いない」って言う?

ドキドキとうるさい心臓。
南課長に聞かれないか心配だけど、ここで南課長から目を逸らすわけにはいかない。
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