完璧上司は激甘主義!?
随分と間抜けな声を出せば、南課長は顔をしかめる。

「あ……えっと、その……」

まさかこんなに早く抜き打ちチェックに来るとは思わなかったし!……なによりこの一週間は先週よりもハードで心身ともに疲れ切っていたし。

なんて心の中で何度も言い訳を述べるものの、口に出しては言えそうにない。
だって目の前で眉を寄せ、怒っているようにも見える南課長に言えないでしょ?
そしてその視線は疑いめいたものへと変貌していく。

「まさか新……たった一週間で元通り、なんてことはないよな?」

疑いめいた南課長の声にビクッと身体が反応してしまった。

ヤバイ。史上最高にヤバイ。

ダラダラと変な汗が流れてきそうな勢いだ。
心臓はドキドキと高鳴り、今の私にぴったりな言葉を無意識のうちに探し出す始末。

あぁ、そうだ。今の私を言葉にして表すとこうだ。
“窮地に立たされている”

まさにそれだ。
今の私にぴったりな言葉は。

「そっ、そんなわけないじゃないですか。ですので、安心してお帰り――……」

“お帰り下さい”

そう言おうとしたのに、なぜか南課長は革靴を脱ぎだした。

「大丈夫なら上がらせてもらう」
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