完璧上司は激甘主義!?
集めたカップを流し台に置き、腕まくりをして洗っていく。

南課長の存在はここ最近、ますます私の中で謎となっている。
考えても考えても、南課長の真意を掴むことが出来ない。
彼女がいるのに、私に構うのはなぜ?
ただの部下として?

キュッキュッとカップを洗う音が響く中、仕事場にいるというのに私の意識は遠くへと飛んでいく。

期待したくないのに、期待しちゃう自分がいる。
もしかして南課長にとって私は、部下以上の存在になっているのかもしれない、と。
だけどそこまで考えて思い浮かぶのは、やはりショーコさんの存在。
堂々と部下である私に恋人の存在を認めてしまうくらい、南課長にとってショーコさんは特別な存在ってことでしょ?
じゃあ私の淡い期待は、夢に終わる。

でもどうして私に構ってくれるの?

丸いリングのようにグルグルと考えが回るだけで、一向に出口に辿りつけない。
その繰り返しだ。

全てのカップを洗い終え手を拭くと、つい大きな溜息が漏れてしまう。

「本当……嫌になる」

全てが嫌になる。
ただ好きなだけなんだけどな。
好きって気持ちだけで全てがうまくいくような、そんな恋愛ならいいのに。

なんて、ね。
そんな恋愛があったとしても、それは恋愛とは言えないよね。

自傷気味に笑ってしまった時。

「なにが嫌になるんだ?」
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