完璧上司は激甘主義!?
なのに斗真は私の腕を離すことなく、情けない顔を向けてきた。

「俺もう心が折れそうなんだよ~。研修なんてもう終わりにしてぇよ」

「終わりにしたいって……。あと一週間もないじゃない」

「その数日さえ俺には我慢できないんだ!」

「ちょっと!!」

必死に訴えかけてくる斗真だけど、その言葉の意味を傍から聞いたら変な意味にも取られてしまいそうだ。
こっちも必死になって腕を払おうとしたものの、それを斗真は許してくれない。

「せっかく未希と同じ職場にいるというのに、全く話せないし!それでも未希の姿を目に収めておきたい一心で見つめていたら、サロンの人達に変質者のような目で見られて、陰口を叩かれるし」

想像出来る。
あの甘~い目で未希を見つめる斗真を、しらける目で見るサロンの人達の姿が。
ふたりが付き合っていると知らなければ、斗真はただの変質者でしかないだろう。
それに女の職場ってそういうのにシビアだし。
仕事第一のサロンにとって斗真は、不真面目な社員に写ってしまっているのかもしれない。

「麻帆~今日は俺にとことん付き合ってくれるよな!?」

「えぇ~……」

「付き合ってくれるよな!!」

再三同意を求めてくる斗真に、返事はイエスひとつしか認めてもらえないようだ。
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