完璧上司は激甘主義!?

歩道でふらつく斗真の身体を支えながらも、つい舌打ちしたい衝動に駆られる。

未希の話をしているうちに気持ちが高ぶったのか、アルコールの影響なのか、店内で「未希に会いたい」と騒ぎ出す始末。
どんなにやめてと言っても未希コールは止まることなく、店員や客の目に耐え切れなくなり居酒屋を飛び出したのだ。

あーあ。……しばらくあそこ、行けないな。
店員にはしっかりと私と斗真の顔がインプットされてしまっただろう。

「未希～！」

「だからそろそろ来るってば！！」

人の気も知らないで、さっきから何度も何度も未希未希と叫んで！
私だって悩みがあるんだからね！
そう言いたいけど、この酔っ払いの斗真に何を言っても無駄だってことは分かる。

せめてもの救いは、あと少しで仕事を終えた未希が斗真を迎えにきてくれるってこと。
電話越しにでも聞こえていたらしい斗真のラブコールに、未希は照れるを通り越して心底呆れ果てていた。
酔いがさめたらきっと未希から、さぞかし恐ろしいお説教が待ち受けているだろう。

未希はあぁ見えて怒ると怖いし。
怒る未希ときっと平謝りする斗真。
そんなふたりを想像したら、少しだけ怒りも収まっていく。