完璧上司は激甘主義!?
時刻は夜の二十二時過ぎ。
飲み屋が建ち並ぶ通りを抜け、華やかな街通りに差し掛かる。
ブランド店や高級レストランが建ち並ぶこの通りを、昔はよく【富豪通り】なんて言っては友達と笑い合っていたっけ。
だってここら辺を通る人達っていかにもお金を持っていそうな人達ばかりだし?

学生から見たら、とても手の届かない人種なのだと感じていたな。

ブツブツと未希の名前を口にする斗真を支えながら、道行く人を見つめる。
学生時代に見た華やかな服装の人達もいる。
でも私達のように仕事帰りの人達だって沢山いる。
よく見ればなにも華やかな人達ばかりが集まる通りじゃないって分かるはずなのに、あの頃の私にはそれに気づくことなく、眩しい人達しか見えなかったんだろうな。

幼かった頃の思い出に更けている中、この辺りでは有名なフレンチのお店が目に入る。

「いいなぁ……あそこ、一度でいいから行ってみたかったんだよね」

テレビや雑誌で何度も特集されるほど有名なフレンチレストラン。
だけど有名なシェフが作る料理は、最高級なものばかりで料金も最高級なのだ。
そんなレストランに社会人一年目の私が、のこのこと入れるはずがない。

きっと食事しに来る人達はそれなりに稼いでいる人なんだろうな。

そう思うと、つい立ち止まりレストランを見つめてしまう。
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