完璧上司は激甘主義!?
「あの、何かの間違いでは?」

「いや、そんなはずはない。名刺を頂いたし。……私も信じられんがどうやら本物のようだ」

余程困惑しているのか、部長の額には汗が滲んでいる。
その汗をハンカチで拭いながら差し出された名刺には、しっかりと書かれていた。
“高畑ミミ”と――。

「で?その肝心な新はどこにいる!?」

すぐにオフィス内を見渡す部長。

「新なら今、出ています」

先ほど確か部下に頼まれた書類を届けにいったはず。

「すぐに連れ戻せ!高畑さんは応接室に通している。私は新が戻り次第詳しく話を聞いてから行くから、それまで頼む」

「分かりました」

興奮しているし困惑している。
確かに今の部長では高畑さんの相手をさせるわけにはいかない。
いつものように面倒な仕事を押し付けられたわけだが、今回はかえって良かったのかもしれない。

いまだに信じがたいが、本当に高畑先生が来ているのなら、待たせるわけにはいかない。

ネクタイを再度締め直し、応接室へと急ぐ。
背後からは部長の興奮気味に叫ぶ声が聞こえてくる。
「早く新を呼び戻せ」と。
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