完璧上司は激甘主義!?
とにかく今は謝るしかないと思い、ひたすら頭を下げ続けているとなぜか椅子を引く音が聞こえてきた。

「新、ちょっと」

「――え?」

顔を上げると南課長は数歩先にいて、私に来るよう手で合図をしている。
そして私がそれを見たことを確認すると、何も言うことなくさっさとドアの方へと向かっていく。

「南課長!?」

慌てて後を追い掛けると、途中で斗真から「ご愁傷様」の言葉と共に、両手を合わせ拝まれる始末。
田村さんや中村さんも心配そうに私を見つめている。
そして先輩達は、憐みの眼差しを向けている。……きっとみんな同じことを考えているはず。
もちろん私も同じだ。

絶対に南課長は怒っている。そしてオフィスでは怒鳴れないほどの怒りを抱えている、と――。


だけど実際問題、怒らせてしまったのは事実。
だからここは潔く怒られるしかないだろう。覚悟を決めて南課長の後を追った。



「紅茶でいいか?」

「……はい」

覚悟を決めて南課長についていったものの、連れて来られた場所は社員達の憩いの場となっているイートインスペース。
堅苦しくない簡単な打ち合わせなどはよくここを利用することもある。
そんな場所でなぜか南課長は紅茶を奢ってくれた。

「あっすみませんお金!」

「これくらい気にするな」
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