完璧上司は激甘主義!?
「ちょっ、ちょっと散らかってますが……」

あれから手を繋いだまま自宅に辿り着いたものの、玄関先に入った途端繋がれた手は離されてしまった。
その瞬間、やっぱりまずかったのかもしれないと思ったものの、ここまできてしまっては仕方ない。
そう思い、どうにか笑顔を浮かべてどうぞと手を差し出す。

だけど南課長は玄関先から部屋を見つめ、固まったまま。
付き合い始めてから南課長がこの部屋に来るのは初めて。最後に来たのは私が振られた日だった。
あの日に比べたら天と地の差がある部屋の様子に、さすがに唖然としているようだ。

「あの……南課長?」

様子を窺っていると、急に南課長は玄関先に鞄を置くと、上着を脱ぎだした。
そしてワイシャツの袖を捲ると、仕事中に見せる厳しい眼差しを向けてきた。

それだけで身構える私に、冷たく言い放った。

「掃除だ」

「…………はい」

有無を言わさぬ声に、私はただ返事を返すことしか出来なかった。
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