完璧上司は激甘主義!?
「以前俺に言ったよな?もう大丈夫だって」

はい、もちろん言いましたとも。
途中までは頑張っていた。ずっと綺麗な状態を維持していたし。

「なのに、どうしてあんな状態だったんだ?」

「それはその……幸せボケ、と言いますか……仕事も忙しくて、つい……」

あまりの威圧感に正直に話すと、南課長は呆れたように大きな溜息を漏らした。
その瞬間、胸が痛む。

もしかしたら南課長は幻滅してしまったかもしれない。
そりゃそうだよね。あれだけもう大丈夫だって言っておきながら、汚部屋だったのだから。

「……ごめんなさい。これからはちゃんと気を付けます」

思わず南課長の裾をキュッと握ってしまった。

これからはちゃんとする。
だから嫌いにだけは、ならないでほしい――。

裾を握る力が強まってしまった時、その手を南課長の大きな手が優しく包んでくれた。

「いいよ、気をつけなくても」

「――え?」

意外な言葉に目を見開けば、南課長は眉を下げ困ったように、だけどどこか嬉しそうに微笑んでいた。
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