完璧上司は激甘主義!?
しかし今の私は、そんなズボラな考え方を激しく後悔している。
電気が点いているということは、間違いなく合鍵を持っている母親か、篤人さんが家にいるってことを意味しているのだから。

そして前者であることはほぼあり得ない。
上京してくるのなら、必ず連絡のひとつくれるはずだし。……ということは後者である可能性大だ。

寒空の下、変な汗が溢れそうになりつつも意を決して玄関の鍵を開け、ドアを開けるとすぐに聞き慣れた声が聞こえてきた。

「麻帆?」

あぁ……やっぱり篤人さんだ。
その瞬間、これから彼に聞かれるだろう質問に対し、どんな言い訳をしたらいいのかということばかりが、頭の中を巡っていく。

玄関に入り鍵を閉めると背後から声が聞こえてきた。

「麻帆……これは一体どういうことだ?」

予感的中。
今まさに私は篤人さんはその質問をしてくるであろうと思っていたのだから。


そう。
そして今に至る。
ルンルン気分はどこにいってしまったのやら……。
今はただ、玄関先で不気味なほど笑顔で見つめてくる篤人さんになんて答えたらいいのかと、模索中だ。
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