完璧上司は激甘主義!?
だけど残念ながらうまい言い訳の言葉など思い浮かぶはずもなく、視線を泳がせるだけでいっぱいいっぱいだった。
すると当然のように呆れたように大きな溜息が聞こえてきた。

「掃除するぞ」

「……はい」

そうなると分かってはいた。
篤人さん曰く、どんなに疲れていても汚い部屋ではゆっくり寛げないらしい。
逆に私はこれくらい汚い方が落ち着いたりするんだけどな。……なんてことは、もちろん篤人さんを前にして言えるはずないけど。

それからひたすら掃除をすること数時間。
やっと篤人さん出張前の綺麗な部屋に戻すことが出来た。

「本当に麻帆は毎回期待を裏切らないよな」

「アハハ……」

付き合い始めてからお互いのマンションに行き来するようになり、次第に互いの私物を置くようになっていった。
私の部屋に篤人さんの着替えなどがあるように、篤人さんの部屋にも私の着替えを置かせてもらっている。
それは“彼女”だけの特権であり、嬉しさいっぱいだけど、逆を言えばこんな風に篤人さんは私がいない間にも部屋に入れてしまうから、ちょっぴり恐ろしい。
今回みたいなことが現に起きてしまっているのだから。

シャワーを浴び終え、部屋着に着替えた篤人さんには何度見てもドキドキさせられてしまう。
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