完璧上司は激甘主義!?
苦笑いを浮かべる田村さんに、なんて言葉を返したらいいのか分からず、私も苦笑いを浮かべることしか出来ずにいた。

確かにそれはマズイミスだ。
田村さんの言う通り、ゲストの目に触れる前だったのが不幸中の幸いだったのかもしれない。

「もうさ、電話を受けた時は頭の中が真っ白になっちゃってさ。とにかく南課長に報告して謝らなくちゃって思いでいっぱいいっぱいだったの」

そうだったんだ。

オシャレな客室で運ばれてきたお酒をちびちびと飲みながら、田村さんの話に相槌を打つ。

「でも南課長に言われて気付かされたよ。私、謝れば済むって思っていたからさ。パンフレットは印刷しちゃった後だったから、これ以上経費を使うわけにはいかないって思って、ゲスト名のところだけ新しく印刷してもらって、それを貼って。もう無我夢中だった」

口ではそう話しているけど、田村さんの表情は達成感で満たされている。

「でも南課長が助言してくれたり、手伝ってくれたおかげなんだ。……なんか今回の一件ですっかり潔癖上司の印象が変わっちゃったよ」

「――え?」

お酒のせいなのかもしれないけど、ほんのりと頬を赤らめる田村さんに、嫌な予感がしてドキッとしてしまう。
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