完璧上司は激甘主義!?
「あんな人なのにさ、終わってから言われたの。『これでお前も一人前だ。よく頑張ったな』って」

言われた瞬間のことを思い出しているのか、どこか夢心地な田村さん。
うっとりと遠くを見つめるその姿は、まるで恋する乙女そのもの。……もしかしてさっきの嫌な予感って的中しちゃったりする?
思いが駆け巡った時、なぜか急に笑い出した田村さん。

「な~んて言っているけど、もちろんそれは上司としてって意味だからね!」

「え。あっ、うん」

まるで心の中を見透かされている気分になってしまい、うまく言葉が出てない。

びっくりした。
一瞬思っていることをそのまま口に出しちゃったかと思った。
でもそうではなさそうで、いまだにクスクスと笑いながらお酒を嗜む田村さんは、つまみの軟骨から揚げに手を伸ばしながら、話を続ける。

「それにさ、さすがに南課長に恋愛感情なんて湧かなくない?六歳も年上だし、潔癖症だし、仕事が生きがいみたいな人だしさ」

「あー……うん、確かに」

口では話を合わせるものの、本当はそんなこと思っていない。

ごめん、田村さん。
私、その六歳も年上で潔癖症で、おまけに仕事人間な南課長が大好きなの。
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