完璧上司は激甘主義!?
「えっと、あなたは?」

戸惑う駅員達にすぐさま頭を上げ、ポケットから名刺入れを取り出し、一枚差し出した。

「失礼しました。私はこういうものです」

名刺を渡された駅員は、名刺と俺を交互に見てきた。

「この女性は自分の直属の部下でして。今後はこのようなご迷惑をお掛けしないよう、きつく言い聞かせますので連れて帰ってもよろしいでしょうか?」

きっと駅員達は、彼女の悪酔いの酷さに警察へ連絡しようとしていたのだろう。
当然なことだ。
これだけ騒ぎを起こして、迷惑をかけているのだから。

当の酔っぱらい女もとい新は、いまだに改札口の切符を入れるところに、おぼつかない手で鍵を差し込もうとしていた。

最初見た時は一瞬目を疑ってしまったが、間近で見てもいまだに信じられない自分がいる。
まさかあの新が、これほどまでに酒ぐせが悪かったとは。

心底呆れ返っていると、駅員は差し出した名刺を返してきた。

「今後はこのようなことをしないよう、よくお伝えください」

「もちろんです。本当に申し訳ありませんでした」

話が分かる駅員でよかった。
普通だったら、最初の時点で通報されてもおかしくないレベルなのだから。
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