完璧上司は激甘主義!?
再度頭を下げ、いまだに改札口と格闘している新の元へと向かう。
するとさすがの新も、俺の顔だけは覚えていたようだ。

「あれ~?どうして私の家に南課長がいるんれすか~?」

ヨロヨロとまるで生まれたての小鹿のように近づいてくる。
その姿に呆れ果て、大きな溜息が漏れてしまった。

「新、帰るぞ」

業務中のようにキツく言うものの、酔っている新には全く通じていない。
不思議そうに首を傾げては俺を見つめていた。

「帰ると言われても、ここが私の家れすから~」

カチンとくる語尾に、額が疼く。
駅員達は姿を消したものの、いまだに俺達は注目の的だ。
こんなところ、取引先に見られたりしたら大変だ。

「悪い」

どうしようもない現状に、強行突破に出る。

新の腰をしっかりと掴み、肩に担いだ。

「えっ!?南かちょー?なんれすか急に!!」

「黙れ」

いつまでも酔っぱらいと、噛み合わない会話を続けているわけにはいかない。
手っ取り早くこの場から立ち去ろうと新を担いだものの、あまりに細く、そして軽いことに驚きを隠せなかった。
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