完璧上司は激甘主義!?
「お客さん、大丈夫ですか?」

なかなか降りない俺達を見て、運転手は心配そうに運転席から様子を窺ってきた。

「すみません大丈夫です。新!降りるぞ!」

「えぇー……」

余程眠いのか、まるで子供のように駄々をこねる新の腕を掴みタクシーから降りると、すぐにタクシーは走り去っていった。

「この時間だし、こんな場所でタクシーひろうのは大変だろうな」

つい帰りの心配をしつつも、腕を掴まれた新はまた器用に立ったまま寝ようとする始末。

「新!ちゃんと部屋まで行くんだ」

寝かせまいと大きな声で叫ぶと、新はハッとしたように目を開けそのままフラフラと歩き出した。
相変わらず今にも転びそうな歩き方に、腕を掴み支えるようにして新の後をついていく。
エレベーターに乗り込み、たどり着いた場所は三階の角部屋。

「ただいまれす」

「それは鍵を開けて家に入ってからだ!」

ここに辿り着くまでは、実家暮らしか誰かと一緒に住んでいることを期待していたが、どうやらその可能性は低そうだ。
新の部屋は真っ暗だし、なにより外観から見て1LⅮkと言ったところだろうか?

「あれ~?鍵がないれす」

探しもせずにそんなことを言い出した新に、さっきまでつい可愛いと感じてしまっていた自分が憎く思えてきた。
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