完璧上司は激甘主義!?
沸々と込み上げてくる怒りを鎮めながら、できるだけ冷静に努める。

「新、その手で握りしめているものはなんだ?」

「え~?あー……どうやら鍵のようれす」

「ならそれを今すぐに使って家に入りなさい」

気分はまるで保護者……いや、教師だ。
出来の悪い教え子を正しい道に導くかのように、できるだけ冷静に言葉を放つと「はぁ~い」と言いながら、やっと鍵を開けてくれた。
ガチャリと鍵が開いた瞬間、これでやっと帰れるという開放感に包まれホッと胸を撫で下ろすも、新はとんでもないことを言い出した。

「さぁ南かちょー。汚い部屋ですがどうぞお上がり下さい」

「は?」

「ここは寒いですから」

そう言うといつの間にか俺の腕をガッチリと掴んでいた新によって、部屋へと連行される。

「新!俺はもう帰るから!」

第一ひとり暮らしの部下の部屋なんかに、上がれるか!
必死に抵抗するものの、あれほどフラフラしていたくせに俺の腕を掴むこの力は驚くほど強かった。

「な~に言ってるんれすか!お茶のひとつでも用意しないとお母さんに叱られます」

「叱られるって……」

そんなわけないだろう。
付き合ってもいない男を上げる方が、よっぽど怒られるさ。
< 67 / 410 >

この作品をシェア

pagetop