完璧上司は激甘主義!?
だけど酔っている新の腕を乱暴に振り払うことは出来ず、結局玄関の中へ入ってしまった。
ドアの閉まる音が、異様に耳に残る。

「ささ!早く靴を脱いで上がってくらさい」

「新……」

ニコニコ顔で俺の腕を引く新に、白旗を上げた。
酔っているし、きっとお茶を出せば満足して帰してくれるだろう。
そう思った俺は諦めて部下である新の部屋に上がった。

「すぐに電気つけますから」

「あぁ」

暗闇の中、玄関に上がった先で新が電気を灯してくれるのを待っていると、少しして暗闇の世界だった部屋が灯りで照らされた。
目が慣れず一瞬瞑ってしまうも、すぐに目を開けると飛び込んできたのは信じられないほどの汚部屋だった。

「……なんだ?これは」

あまりの酷さに絶句し、すっかりと力を失った手からはビジネスバッグが落ちていく。

さっき自分で汚い部屋だとは言っていたが、これはあまりにも酷過ぎるだろ。
ソファーの上には大量の洋服。もちろん全て畳まれてなどいない。
食事を取るべき場所は女性特有のスキンケアグッズで埋め尽くされており、その中には使用済みのティッシュの山が見える。
床にも雑誌や漫画、パジャマやゴミが散乱しており失礼だがとてもじゃないけど女性の部屋には見えない。
< 68 / 410 >

この作品をシェア

pagetop