完璧上司は激甘主義!?
「しかしまぁ……よくもこれだけ汚せたものだ」

風呂場の掃除をしながら呆れ返ってしまったと同時に、つい思い出してしまう。
妹の存在を……。

母親が働いていたから、自然と俺が家事をやるようになったが、そのせいか全く妹は家事が出来ない女に成長してしまった。
今や母親を超えるキャリアウーマンだ。
もちろんそんなひとり暮らしの妹の部屋は、新の部屋の二の舞い。
同等レベルだ。
見兼ねて数ヵ月に一度、妹の部屋の掃除に行くのだが……。
こうやっていると、その時のことを思い出してしまう。

「新麻帆……か」

今日たまたま駅の改札口で出会わなければ、きっとこんなにも意外な新の一面を知ることはできなかっただろう。
お茶を淹れるのが上手で、努力家の部下でしかなかった。
なのに、たった数時間で印象がガラリと変わってしまったんだ。

「朝、正気に戻った新は俺を見たらどう思うだろうな」

あの様子から見て、全てを覚えているとは思えない。
なのに朝、起きたら俺が部屋にいるんだ。
相当驚くだろう。

数時間後の出来事を予想するだけで、誰もいない浴室には笑い声が響き渡る。



最初は事の成り行きだった。
仕方ないと思っていたんだ。
だけどこの先、この日が自分にとってターニングポイントになることを、この時の俺は分からずにいた。
< 74 / 410 >

この作品をシェア

pagetop