星をみる
★★★


誕生祭を前に、城内は忙しく賑わっていた。


そんな中、賓客として訪れた青年がアルバートに駆け寄る。


「アル!!」

呼ばれたアルバートも庭園を駆け抜け、その青年に拳で挨拶をした。彼は笑ってそれを手のひらで受け止める。

「久しぶり、元気そうだね」
「ヒューイもな!」

アルバートとヒューイはじゃれあう猫のように再会を喜んだ。
二人はいとこ同士で、年も同じだ。
ヒューイが半年前に先に誕生日を迎え、それ以来だった。
背丈も似通った二人は本当の兄弟のように仲が良く、しょっちゅう城下にイタズラをしに行っていた。
もちろん、今日もその算段である。

「今日はさ、馬に乗って外れの丘まで行かないかい?」

ヒューイはキセルをふかしながら悪巧みの計画をたてた。
アルバートはまだキセルに手をだした事はない。
正直言うと、一度こっそりと吸ったのだが思いっきりむせてそれきりなのだ。

「外れの丘?あんなとこ何もないだろ」

アルバートは石垣に背を預けて首をひねった。
外れの丘は城下町を抜け、田園をしばらく駆けたところにある寂れた丘だった。
風変わりな学者が一人住んでいたと思う。
父親の話によれば、その学者は中々高名で権威もあるのだとか。
アルバートは興味を持てず聞き流したけれど。

ヒューイはそれがさ、と青い瞳を細めた。

「ここに来る途中、外れの丘の辺ですっごく可愛いコを見かけたんだ」
「へえ」

その学者の娘だろうか。
アルバートは石垣から背を起こした。
アルバートとヒューイの女性の好みは似ている。
そうして二人は昔から、どちらが早くターゲットを落とすか、とゆう悪趣味なゲームを楽しんでいた。


外れの丘なんて遠くて面倒だと思っていた気持ちはどこかにすっ飛んでアルバートは駆け出した。

「俺の馬、貸してやるよ」
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