星をみる
★★★

いつの間にか雨は止んでいた。
三人で簡単な食事をしたり、生い立ちを話したりしているうちに夜はどんどん過ぎていった。
コロンバインは慌ててノートと筆記具を掴むと小屋の外へ飛び出した。
続いてアルバートとヒューイまでついてくる。

「お二人は休んでてください。」
「ばか、そんなわけに行くか」
「こんな夜に女の子一人放り出せないよ」

コロンバインは適当な場所に座り、ノートを広げた。

「・・・お気持ちは嬉しいですけど、私の観測時間長いですよ」
「どれくらいで終わるんだ?」

アルバートが空を見上げながら尋ねる。

「一晩中です」
「は?」
「星の動きの記録をつけたいんです、だから」
「・・・なるほど」
「だからお二人は中で休まれるか、お城へ戻ってくださって大丈夫です。わたし眼鏡があれば自分でなんとかできます」

コロンバインがそう言っても、二人はその場から離れなかった。

「いいよ、一晩中付き合うよ。星なんてそう長く見たことないし」
「オレも。明日の朝帰れば大丈夫だろ」
「・・・・そうですか」

コロンバインはランプのあかりを頼りに、ノートに記録をはじめた。
いつもは先生と二人、もしくは一人でしている作業だったから、そばに別の人がいることに不思議な感覚がしていた。

やがて、会話に入らなくなったヒューイを見ると、壁に寄りかかるようにして眠っていた。

「ったく。面倒くせえな」

そう言いながらも、アルバートはヒューイに毛布をかぶせてやった。

「コロンバインは?寒くないか?」
「平気ですよ。アルバートさん、寒かったら中に入って」

言い終わらないうちに、アルバートに背中から腕を回され、囲われた。
彼とひとつの毛布にくるまる形になって、その暖かさにコロンバインは狼狽える。

「こうしたら寒くないだろ」
「・・・はい」

コロンバインは同様する心を隠しながら空を見上げた。
すぐ側にアルバートの声が聞こえ、吐息がかかりそうだ。

「あんた、毎晩こんな事してるのか」
「はい。主にわたしの仕事は観測です。他にも先生の実験の助手をしています」
「ふーん。それ楽しいのか?」
「楽しいですよ、先生は優しいですし」
「へえ。・・・まあ頑張れよ」

アルバートはアクビを咬み殺すように俯いた。

「眠いですか?」
「・・・あんたは」
「わたしはお昼寝ましたから」
「・・そう」
「あの、本当に寝てくださいね」
「・・・・・・・・・・・・・・・・うん、おやすみ」

そう言うと、アルバートはコロンバインを後ろから抱きしめたまま、彼女の肩に顎を乗せた。

「アルバートさん?」
「・・・・・・・・・・・・・・・」

返事はない。
ただの屍のようだった。








< 7 / 9 >

この作品をシェア

pagetop