カウント・ダウン
…なによ。
どいつもこいつも。
なんにも分かっちゃいない。
部屋に入るなり重いカバンを小さなソファに投げつけた。
一人暮らしの部屋はなんだか荒んでいる。
もう何日仕事を休んでないだろう。
鉢植えのポトスさえ色を失ってだらしなく埃をかぶっている。
何にもする気がしない。
ただ彼の疲れた横顔が目に焼きついてヒリヒリする。
そう、もう後悔してる。
あんなのただの八つ当たりだ。
小さな事をあげつらって、冷たい言葉を投げつけたんだ彼に甘えて。
あれだけ自分を正当化しておいて、今さら素直に謝る事も出来ない自分が情けない。
ふと、静かな部屋に僅かな振動が響いた。
投げつけたカバンからこぼれてフローリングに投げ出されたケータイが、ぶうんぶうんと振動を放ちながら生き物のように動いている。
彼だ!
そう、彼は意地っぱりなアタシにいつだってきっかけをくれるんだ。
なのに。
ケータイは簡単にアタシを裏切った。
会社の後輩からの、今日の打ち合わせについての報告メール。
返信する気にもなれず、ヤケっぱちに大げさに大の字に寝転んでやった。
もういいっ
最後に投げつけた捨てセリフとガラス越しに見た彼の疲れた横顔がくるくるリフレインしたまま、眠気に身を任せた。