殺し屋さんと王子様









僕は、何人の人を殺めたのだろう。


覚えていない。


ただ、その時の情景は嫌なぐらい鮮明に覚えている。


真っ赤な血に染まっていく身体。


「お願い」と助けを乞う絶望に満ち溢れた顔。


ごめんなさい。


僕はいつもそう言って、僕は悪くないと逃げている。


そうでもしないと心なんかすぐに崩れてしまう。




《010チハル。至急依頼執行を求む。エントランスへ向かえ》




空っぽの人形なんじゃないかってくらい中身のないアナウンス。



僕は硬い革に包んだナイフを腰にかけ、エントランスへと足を運んだ。








< 1 / 2 >

この作品をシェア

pagetop