殺し屋さんと王子様












「ふう……流石にきついね」



只今、王子の部屋にいます。

国王の実の息子、王位継承者の部屋です。

……さすがに国を納めてる国王の城となると警備が厳重で少し手こずった。

こうなることを予想していたため、指令時間より早く侵入したのは得策だった。



「さてと。王子様はー……いたいた」



夜中の12時近くということもあり、王子は大きなベッドでぐっすり眠っている。

この王子に罪はない。

依頼者曰く「国王がむかつく。息子が殺されれば国を見直すだろう」とのこと。

親のせいで殺されることになってしまうとは。

同情しないほど僕は冷血じゃない。

断ろうかと思ったけど切り出す前に「お前にしかできない」なんて先手を打たれてしまったら何も言えなくなってしまう。



「ごめんなさい」



僕はいつもするように、深く頭を下げた。

理由がどうあれ人を殺めるなど絶対にあってはいけないこと。


本当に、ごめんなさい。


部屋の隅に置かれた古いアンティーク調の大きな時計に目を向けると、12時まで残り一分を切っていた。


腰にかけた、革に包んだナイフに手を添える。

紐をほどき、月明かりに照らされ眩しく光ったナイフを手に持つ。


ナイフを持つときは、いつも緊張して手が震える。


ダメだ。

今日は相手が相手なだけあって一層緊張する。

いや、正直言って恐い。




「それで俺を殺すのかい?」



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