LOVEPAIN⑤
そこから篤とは会話が無かった
私から話し掛けて欲しくないオーラでも出ていたのかもしれない
篤は気にしたように私の方をチラチラと見るけど、
何も言って来ない
今は誰とも話したく無かった
私と篤は自分達の部屋の前へと戻って来て、
お互いの部屋へと帰る為に、
ここで別れる
「じゃあな」
篤はそう言って、
自分の部屋の前へと立ち鍵を取り出している
何個か鍵の付いたキーリングが見えた
私も自分の部屋の前へと立ち、
そのドアを見つめた
この中に入れば、
私は一人でこの夜を過ごさなければいけない
誰も居なくて、一人で……
きっと一晩中、
成瀬と芽衣子さんの事を考えてしまう
今頃二人は、って、
ずっと考えてしまう
この現実から、逃げてしまいたい
もうこんな事、
辞めようと思うのに
幸せにならないと、って思うのに
胸を痛めつけるような苦しみから、
逃れたくなってしまう
ほんの一時でも、
忘れたい――…