LOVEPAIN⑤

「大丈夫そうに見えねぇから、
俺も帰るって言ってんだろ」


そうやって私の事を気に掛けてくれていて、

ずっと耐えていた涙がこぼれそうになる



泣きたくない



泣いたら、
あんな奴に傷付けられたって認めるみたいで、嫌だ



心だけじゃなく、体だって、
傷付けられてなんかいない



セックスなんて、
私にとったら大した事なんかじゃないし、

べつに犯されたわけじゃない




何度もそう自分に、言い聞かせる




自分の体内から逆流して出て来る、その感覚



佐藤雲雀の体液の感覚を感じて、
めまいがして来る



立っているのが、やっと





「広子?」


黙ったままの私に、
そう優しく声を掛けてくれる



前までならば、
何も躊躇わずにこの胸に飛び込んだのかもしれない……





< 211 / 641 >

この作品をシェア

pagetop