LOVEPAIN⑤

後から思えば、

この時の私は普通じゃなかったと思う


狂っていたのかもしれない



所々、記憶も抜け落ちている――…





昼を過ぎた頃



私は合鍵で成瀬の部屋の鍵を開けた



ドアを開くと暖かい空気に乗って甘い匂いがして、

それで下駄箱の上に置かれている芳香剤に気付いた



その小さな素焼きの陶器の芳香剤は、

前にこの部屋に来た時は無かった




それを手で思い切り払うと、
それは玄関の床に勢いよく落ちて、

あっけなく割れた






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