LOVEPAIN⑤
私が包丁から手を離すと、
それは床へと落ちた
カタリ、と音をたてた
「広子ちゃん、大丈夫?」
血が溢れる右手の平を左手で抑え、
芽衣子さんは私を安心させるように笑いかけて来る
手が痛いはずなのに、
それを表情に出さない
芽衣子さんの視線の先
ほんの少し首がチクリとしたから、
多少は私の首も切れたかもしれない
だけど、芽衣子さんの手の平の傷に比べたら、
それは大した事はない
床が芽衣子さんの血で赤く染まって行く――…