LOVEPAIN⑤




私が成瀬の部屋のドアを開けて、
玄関に入ると




「あ、靴のまま来い。

まだ皿の破片とか落ちてるかもしんねーから」


成瀬はダイニングから、
こちらにそう声を掛けて来る



かと言われても、
土足で上がれるわけなんてない




私はミュールを脱いで、
部屋へと上がる




「馬鹿、お前、足切ったらどうすんだよ。

一応、破片とか拾って、掃除機かけたけど」


そう言われて下を見ると、

コンセントに挿さったままの掃除機が置かれている




キッチン周りやダイニングは片付けたのか、

散らかってはいない


ただ、食器棚には何も入っていない




床には、新聞紙にくるまれた固まりの入ったゴミ袋が、

数個置いてある



きっと、その中に割れた食器類が入っている




床も拭いたのかもしれないが、

フローリングの木目にかすかに残る血痕――





リビングの方へと目を向けると、

そちらはまだ、
私がひっくり返したままになっている



カーテンも床に落ちたまま



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