LOVEPAIN⑤



「大丈夫?」


ナツキにそう声を掛けられ、
私はハッと我に返った



知らない間に、
私は自分の両耳を手で押さえていた




「うちの子が、すみません!」


私達の近くのテーブルで、
小さな男の子がコップを割ったみたいで、

その母親と思われる女性がこちらに謝罪して来た




「いえ。
私も大袈裟に驚いて、
すみません」



心臓が、バクバクとしている



フラッシュバックみたいなものなのかな?




私の母親は、よく怒る人だった


父親がどうしようもない人間だから、
私に当たり散らしていた母親の気持ちも、

今なら少しは理解出来るけど


でも、許せない




その他にも、母親に怒られ嫌な思いをさせられた事は沢山あるのに、


何故か、その時の事をよく思い出す




そんな母親みたいな女になりたくないと、

その幼少の頃からどこかでずっと思っていたのに



成瀬の部屋をめちゃくちゃにした私は母親みたいだったし、


それ以上に、どうかしていた





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