LOVEPAIN⑤

「あ、思い出した!」


そう言って、
コウジロウさんはズボンのポケットから小さな箱を取り出した




「えっと…」



「俺、撮影の事ばっか考えてて、すっかり忘れてた!

はい、これ」


その箱を、私に手渡す




「これ、風邪薬ですよね。

コウジロウさん、
私が風邪引いてるの分かったんですか?」



この人はこんな所迄、
鋭いのだろうか?!




「違うよ~。

田中君があの後、
これ買って帰って来て。

広子ちゃんが休憩で居なかったから、
俺に後で広子ちゃんに渡しといてって」



「――はい」



「ええ?!

広子ちゃん?!」


コウジロウさんは
驚いた顏でこちらを見ている



それもそのはずかもしれない



私はその風邪薬の箱を手に持ち、
突然泣き出したから


目から、大粒の涙が溢れ落ちる


ボロボロと



それは、悲しいものではなくて、
嬉し泣きなのかもしれない




なんだろ?



その田中たちおの優しさが、
今の私には本当に嬉しくて




本当に今の私は、
色々と弱っているから







< 47 / 641 >

この作品をシェア

pagetop