LOVEPAIN⑤


「これが、広子に一番似合いそうだったから」



ナツキは私に贈ったその腕時計を箱から取り出し、

横のネジを弄っている





「これ自動巻きだから時間合わせる。

22時ちょうどになったら教えて」




「あ、はい」



私は鞄から携帯電話を取り出し、

その時を待つ





「あ、22時になりました」


「はーい」


ナツキはそう言って、

私の左手を持ち上げるように持つ



そして、その腕時計を私の左手首に嵌めてくれた




「緩い?」



「いえ。大丈夫です」



嵌められた腕時計は私の手首には少し大きいけど、

そうやって少し余裕がある方がいいのだろうな、
と思った



手を上げたり下げたりした時に、

腕時計が滑るように動いて、
それが綺麗だから




生まれて初めて、
腕に時計を嵌めたけど



大人になったような、
高揚とした気分になってしまう

< 575 / 641 >

この作品をシェア

pagetop