LOVEPAIN⑤
「これが、広子に一番似合いそうだったから」
ナツキは私に贈ったその腕時計を箱から取り出し、
横のネジを弄っている
「これ自動巻きだから時間合わせる。
22時ちょうどになったら教えて」
「あ、はい」
私は鞄から携帯電話を取り出し、
その時を待つ
「あ、22時になりました」
「はーい」
ナツキはそう言って、
私の左手を持ち上げるように持つ
そして、その腕時計を私の左手首に嵌めてくれた
「緩い?」
「いえ。大丈夫です」
嵌められた腕時計は私の手首には少し大きいけど、
そうやって少し余裕がある方がいいのだろうな、
と思った
手を上げたり下げたりした時に、
腕時計が滑るように動いて、
それが綺麗だから
生まれて初めて、
腕に時計を嵌めたけど
大人になったような、
高揚とした気分になってしまう