LOVEPAIN⑤
「――すみません。
成瀬さんの顔見てたらムカついて殴ってしまいましたけど、
あんたを殴っても余計にこいつが傷付くだけでした」
ナツキは左手で、
私の頭を撫でてくれる
もうしないから、って
ナツキが言うように、
成瀬が殴られているのを見て、
私は辛かった
胸の何処かには、
今も成瀬を憎む気持ちがあるけど、
だからって、
そんな風に成瀬が傷付く事は私は辛いだけ
自分のせいで好きな人が殴られて、
こんな風に怪我をするなんて
「広子。帰ろう」
ナツキは私をマンションではなくて、
白いベンツの方へと誘導するように、歩き出す
私はそれに従う
後ろから聞こえる音で、
成瀬が再び車に乗り発進させたのが分かった
「俺が居るから」
手を強く握り締めてくれた
「――はい」
私はその手を握り返し、
ナツキに寄り掛かるように抱き着いた
「広子?」
ナツキは歩みを止めて、
そんな私を支えるように抱き締めてくれる