LOVEPAIN⑤

「寒いのかよ?」


そう気付いてくれたのは篤で、

袖から出た腕を擦っている私の手を見ている




「はい。少しだけ」



「広子ちゃんと篤君、
やっぱり付き合ってるんじゃないの?」


そう訊いて来るのは芽衣子さん



何をどう見たら、
私と篤がそんな風に見えるのだろうか?




「いえ」



「そうなんだ。
でも、広子ちゃん彼氏居るんだよね?」


その視線は、
私の左手の薬指を見ている



そこには、ナツキから貰った指輪だけじゃなくて、
あの指輪も




“――返さなくていい。
使わないでくれたら。

捨ててくれてもいいから――”


成瀬にはそう言われていたけど、
この指輪を外せなくて、
あれからもいつも付けている





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