私は彼に愛されているらしい
きっとこんな風に何かが変わっても時間とともに当たり前のものになっていくんだろうな。

でも。

「自分でも勝手に盛り上がっているのと、どこか冷静に見ているのがあるんですけどね…。」

「何が?」

「私、本当にプロポーズして貰えたのかなって。」

そう呟いて握っていたペンを机の上に置いた。

どういう思いで口にしているのか読めないと舞さんの困った表情が私に続きの言葉を求めている。

「流れでつい出てしまった言葉なんじゃないかなと。実際、そのあと何も進展がないんです。」

ずっと考えを巡らせているだけで口にはしていなかったが引っかかっていることがあった。

それはあれ以来アカツキくんが何も話を進めようとしない事。

私から切り出せばいいのかもしれないけど、もしあのプロポーズがつい言ってしまったものだったらアカツキくんを困らせてしまうし自尊心も傷がつく。

ハッキリしない中でもやもやするが、一度でもそういう言葉を貰えただけで満足している自分もいるのだ。

「…だから進展させようとこの企画をたててる?」

「いいえ、それとは関係なく私がやりたいだけなんです。…そう思われちゃいますかね?」

「いや。竹内くんなら気持ちの裏側も読めるだろうから、みちるの振る舞いをみているだけで分かるでしょ。変な疑いはかけないと思うよ。」

「良かったです。」

情けなくも笑顔をつくる私に舞さんは微笑んだ。

少し吐き出せたことで気持ちが軽くなった気がする、やっぱり私は気になっていたんだな。

あの時のアカツキくんの気持ちがどこにあったとしても、それは私にはどうすることが出来ないものだ。

かもしれないを考えたところできっと答えは出ない。

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