私は彼に愛されているらしい
ダッシュボード、コンソールボックス、ドアポケットにラゲージスペース、いくらでも場所はあるけど扱い方に悩む。

通勤の度に車に乗っては空間の使い道を考えた。

どうしよう、悩んでいる内に時は過ぎてついにお誕生日会の当日を迎えてしまう。

あると思っていた時間もあっという間に無くなってしまった。

正直言うと自信はない、でも。

「よし、よし。全部揃ってる。身だしなみも…多分オッケー。」

手荷物を確認してそれぞれサプライズの位置に準備し最後に自分の身だしなみを鏡の前で確認した。

大丈夫、出来る範囲内での上出来さに持って行けたと思う。

どうやっても顔やスタイルは変わらないから自分に出来る、なるべく最高の場所へと努力をした。

高望みはしない、等身大で行けばいいと開き直るのも年を重ねた良さだと思う。

「あー…胃液でそう。緊張する。」

初めての試みに緊張が高まり過ぎて気持ち悪くなりそうだ。

胃の辺りをさすりながら気合を入れて私は玄関のドアに手をかけた。

さあ、いこう。

11月の少し肌寒い青空はお誕生日会日和だ。

「喜んでくれますように。」

車を走らせて30分強の場所にあるアカツキくんのマンションに着いて改めて見上げる建物。

9階建てのここは私が住むアパートよりも広くてセキュリティもしっかりしている。

それでも駅から遠いこともあって家賃は私の部屋とそれほど変わらなかったことに驚いた。

車があるなら駅近に拘らなくても良かったかも。

来る度に思うことだけど今日はおいておこう。

慣れた足取りでアカツキくんの部屋の前まで進み、カバンの中から封筒を取りだして呼び出し音を鳴らした。

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