私は彼に愛されているらしい
少しの間があった後に開錠音が聞こえて玄関のドアが開かれる。その奥には私を笑顔にさせる顔があった。

「おはよう、みちる。」

「おはよう、アカツキくん。準備できてる?」

「出来てる。着く前に連絡くれたら下で待ってたのに。」

そう言いながらアカツキくんは部屋に入り上着を手にして携帯や財布をかき集める。無防備だなと思うけどアカツキくんはカバンを使わない派だ。

「じゃあ行こうか。」

「うん。アカツキくん、これ。」

支度を終えて玄関に戻ってきたアカツキくんにさっき取り出したばかりの封筒を差し出した。

案の定、中身の予想が付かないアカツキくんは目を丸くさせてそれを受け取る。

中には紙が一枚。

「はは。なにこれ。」

短い文章を目で読み上げてアカツキくんが噴き出しながら笑った。

それは今日のお誕生日会への招待状として渡したものだからだ。

「お誕生日おめでとう。これから素敵な時間をプレゼントします。」

企みが成功した私も嬉しくて笑みをこぼす、掴みは上々だと心の中でガッツポーズをした。

やはりノリのいいアカツキくんは期待に応えてくれるんだから。

「表にリムジンを用意してございます。」

ふざけてお辞儀をする私にアカツキくんはまた楽しそうに笑い声をあげてくれる。

「やっべ、めっちゃ楽しみ。」

その笑顔をありがとう。

今日という日の始まりに満足した私たちはウキウキした気持ちを抱いて部屋をあとにし、今日の為に用意したなんちゃってリムジンに乗り込んだ。

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