私は彼に愛されているらしい
「この年になるとそう思うけどね。子供の頃は何の楽しみもない中休みの様な季節だと思ってたな。運動会も終わって次はクリスマスだっていう中休み、ハロウィンも終わってるしね。」

「そっか。私も早生まれだからな。2月初旬てバレンタイン一色でしょ、ちょっと微妙。」

「暫くは同い年だ。」

指を絡めて手を繋いでくるアカツキくんは優しい顔でそう誘ってくれる。

私は特段彼が年下であるということを気にしてはいなかったけど、前のプロポーズ事件でアカツキくんがそう思っていたことを気付かされた。

彼が年下というよりは、世間の人が見た男の人の20代は女の人よりも若いと思っていたから気を遣っていたのだけど。

でももうそれも気にならない。

アカツキくんは私と対等に手を取り合うことを選んでくれたのだ。

「同い年か…でもアカツキくんは私より大人だよね。考え方とか立ち振る舞いとか、本当に尊敬する。」

「それは周りを観察してるからなせる業なの。俺にしてみればみちるの方がよっぽど大物だよ。」

「お、大物?」

気になる単語が心にひっかかって私は目を細める。少し考えて、でもやっぱりそうだ。

「それ褒めてないでしょ。」

「ある意味褒め言葉。」

「ある意味なんていらないから!曖昧な言葉の後にいい意味で~とかって誤魔化すのと大差変わりないからね!?」

抗議の声を上げるとアカツキくんは楽しそうに笑い私の手を引っ張って歩く速度を上げる。

それだけで誤魔化される私は掌から伝わってくる彼の体温にすっかりほだされてしまうのだ。

凄く心地いいこの空間に満たされていた。

真っ赤な葉っぱがひらひらと重力に従いながら舞い降りてくる。なんて綺麗な景色だろう。

秋という季節の奥深さを言葉ではなく感覚で捕らえられた気がして深呼吸をしてみた。

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