私は彼に愛されているらしい
とにかく箸をすすめようと口に詰め込んだ野菜を噴き出しそうになって懸命に堪えた。

目をおもいきり見開いてアカツキくんを見上げる。

信じられない、どうしてそんなこと分かるのだろうか。

まさしく舞さんにプレゼントの締めくくりはみちる自身でしょとからかわれたのだ。

「…不採用です。」

「ははは、残念。」

「もう紅葉みたいに真っ赤になっちゃった。」

「ああ、キレイだったね。ありがとう、みちる。」

このままだと店を出るまでこの話題で引っ張られる、そう予感した私は何とか違うことに感心を持たせようとして強引に持っていった。

感想を聞けばアカツキくんは楽しいと進行形で笑ってくれる。

まだだよ、まだあるんだ。

本当は今日会ってすぐにでも渡したかったものがまだ車の中にあるんだよ。

もう少しここでゆっくりしたい気持ちと、早く帰って最後のプレゼントを渡したい気持ちが交錯してくすぐったくなる。

どんな顔してくれるかな。

そんな思いを胸に抱いたまま美味しい食事の時間を楽しむと、私たちはアカツキくんの部屋へと戻っていった。

少しだけお酒を飲んだアカツキくんはとてもご機嫌だ。

疲れも出て運転に少し不安を抱いたけど絶え間なく続いた会話のおかげであっという間にアカツキくんのアパートに辿り着けた。

サイドブレーキを引けばホッと一息だ。

「ありがとう、運転お疲れ様。」

「どういたしまして。」

労いの言葉が心を温かくしてくれる。

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