私は彼に愛されているらしい
「なんだ?割といい男なのか?」

気付けばそんな言葉を発して思わず口元に手を当てた。

ビックリ、漫画みたいな自分の反応にビックリして恥ずかしくなった。無意識に声に出しちゃうってこんなことあるの?やだな、情けない。

気を取り直して仕事に勤しもうと端末に向き直し、そこでようやく痛いくらいの視線に気が付いた。

「げっ。」

ここでも無意識に思ったことが口から零れる。しかし言われた方は全く気にした様子もなく、にやにやと厭らしい笑みを浮かべて頬杖をついていた。

「んふふ~。楽しそうなこと見付けちゃった。」

そういえば今日は隣に吉澤舞さんがいたんだった。嬉しそうな顔、これは絶対に聞かれたな…失敗した。

「舞さん…。」

「割と、いい男?」

密やかな声で繰り返した舞さんは指で示しながら楽しそうに目配せをする。その先は言わずもがなでしょ。

竹内アカツキくんがいた。

語尾に音符でも付いてそうな勢いで笑顔を向ける舞さんに頭が痛くなる。駄目だ、捕まった。

諦めた私は痛い顔をして目を閉じる。

「今日は早弁しよっか、みちるちゃん。5分前集合ね、大丈夫よ有紗にも言っとく。」

何も弁解しようとしない私に何かあると勘付いた舞さんは心底楽しそうだ。どうやらいつものランチメンバー内で情報を展開しろということらしい。

私と、先輩の舞さんと、後輩の有紗。

普段から割と隠し事もなく話している仲だから別に構わないと言えば構わないけど、なんとなく今回は話す気にはなれなかったからバレてしまったという形か。

でも、話せる?あの内容を話せるの?私。

自分的にかなりハードな内容なんだけど。

そんなこと考えてると水曜日の記憶が鮮明に思い出されてたちまち顔が真っ赤に染まった。あれを話すの?真昼間から?

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