私は彼に愛されているらしい
「え、なに?何かあったんですか?」

舞さんから何も聞かされていないのか、後輩の有紗は私と舞さんを交互に見つめながら疑問符を飛ばしてくる。

私とは違って若さを武器に、そんでもって女子力を感じさせる愛らしさは同性から見ても目を引く存在だ。今日も可愛いな、有紗。

「みちるが面白いネタ持ってんのよ。でしょ?」

「…私としては面白くないです。」

「みちるさんに何かあったんですか?」

「多分、色恋の話よね?」

「えー!!」

舞さんの言葉に驚きながらも有紗のテンションは一気に駆け上がったのを感じる。

分かる、分かるよ。私が逆の立場だったらウキウキして話を聞きたくなる筈だ。でも今は立場が違うの!

渋るように口をへの字にして黙る私を置いて舞さんはさらに続けた。

「ね、有紗は竹内くんって知ってる?隣の室の。」

「隣の室って…みちるさんの室ですよね?竹内…アカツキさんですか?」

「そうそう!やっぱ知ってたのか!」

「そりゃあ、女子の間では有力候補として名前が挙がってますからね。違う部の子から何回合コン頼まれたか分かりませんよ。接点もないしお断りしましたけど。」

当然の様にさらりと竹内情報を開示する有紗に驚いて私は目と口を開いた状態で固まった。

何となくの予想は付いていたけど、竹内くんはモテているのか?

え?でも申し訳ないけど周りが目をキラキラさせるほどのイケメンとは思えない。

「イケメンと称されることはないですけどね。でも気になってる人は結構いますよ?肉食女子は優良物件を逃しませんから。…みちるさんの彼氏ですか?」

「はあっ!?」

「あ、そうなの?」

「違いますよ!何言ってんですか!有紗もさらりと凄いこと言わない!」

この天然ボケボケちゃんは何てことを言ってくれるんだ。彼氏だったらとっくに紹介してるだろうに察してくれよと本気で思う。

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