私は彼に愛されているらしい
「最近の若い者はそういう警戒心無いよね!おばちゃん心労がたたっちゃうわ!」

唯一の既婚者で少し年が離れた舞さんはプリプリしながらパスタをくるくるとフォークに巻いた。

27歳の私、25歳の有紗、そして30を超えている大人の舞さんで食べる昼食は年の差なんて全く感じないけど、こういう時に舞さんは大人なんだなって経験値の違いを感じさせられる。実を言うと私と舞さんでさえも小学校では被っていない程度に年の差はあるのだ。

知識もあって、常識もあって、私の憧れる30代の女性だと思う。

私も舞さんみたいに格好いい30歳になりたいな、あと3年でどうにかなるとは思えないけどそう願った。

「ま、解決したなら良かったじゃない。みちるが無事で何よりよ。」

「はい。ありがとうございます。」

「お礼を言うなら、肉食女子の獲物にされてる彼にどうぞ。」

さっきの有紗の話を持ち出して来ているのだろう、素早く反応した有紗は声を出して楽しそうに笑った。こういう回転の速さも見習いたいものだ。

「あの人たちは常に物件調査をしてますからね。」

そう言ってスコープを覗くような仕草で笑いを誘う。有紗のそのノリも楽しくて大好きだ。

「で、その優良物件はその後どうしたのよ?」

「あ、はい。私の車でファミレスに行って、そこでメール講座をしてもらった後に駐車場にある竹内くんの車まで送ったんです。その時に…。」

「その時に!?」

ただでさえ躊躇う様に細くなった声に加え、有紗の食いつきに思わず目を泳がせて私は言葉を詰まらせた。顔が熱い、ヤバイ、思い出すだけでも恥ずかしいのにまた言わせるの?

「好きだって言われて奪われちゃったのね~。」

歌うような声で尋ねる舞さんに、私はゆっくりと頭を下げた。

その通りです、と。

「きゃー!!恥ずかしいー!!」

有紗が両頬に手を当てて足をジタバタさせて悶えた。舞さんも両手で口を覆い恥ずかしそうな素振りをする、でも貴女おもいっきりニヤついてるじゃないの。むっつりか、むっつりなんですか。

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